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2021年の食料・飲料卸売業の販売額は前年比1.1%増の53.4兆円であった(経済産業省の商業動態統計
より)。
出所:経済産業省資料より
食料・飲料卸売業の販売額の推移は、緩やかな上昇傾向にある。
2019年は前年に比べて減少に転じたが、2020年は再び増加に転じて新型コロナ禍でも底堅く推移している。
2020年の食品卸業界は、コロナによる巣ごもり需要増の影響により、スーパーやディスカウントストアなど家庭向けが伸長したが、飲食店向けの業務用需要が落ち込み、全体としては横ばいとなった。
2021年の食品卸業界は、年前半は新型コロナによる落ち込み、年後半は経済再開の影響を受けた。
2020年に落ち込んだ業務用は一部で回復したが、2020年に好調であった家庭向け食品需要は減少した。
品目別に見ると、好調だった調味料や菓子、缶詰、乾物などの家庭向け食品は伸びが鈍化した。
一方、2020に落ち込んだ業務用の冷凍食品やチルド食品、ビールなどのアルコール類は回復傾向にある。
食品卸業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りである。
売上高ランキング | (億円) | |
順位 | 会社名 | 売上高 |
1位 | 日本アクセス(伊藤忠商事の完全子会社) | 21,203 |
2位 | 三菱食品(7451) | 19,556 |
3位 | 国分グループ本社(未上場) | 18,814 |
4位 | 加藤産業(9869) | 11,371 |
5位 | 三井食品(三井物産グループ) | 6,643 |
6位 | 伊藤忠食品(2692) | 6,126 |
7位 | ヤマエグループホールディングス(7130) | 5,036 |
8位 | スターゼン(8043) | 3,814 |
9位 | 西本Wismettacホールディングス(9260) | 2,132 |
10位 | トーホー(8142) | 1,885 |
出所:会社四季報などより作成
三菱食品は三菱商事のグループ会社であり、菱食など4社が統合して誕生した会社である。
なお、ヤマエグループホールディングスは食品関連と糖粉・飼料畜産関連事業、トーホーはディストリビューターとキャッシュアンドキャリー事業の売上高である。
最近の食品卸業界のM&A(一部)
年度 | 買い手 | 対象企業・事業 |
2020 | 泉平(未上場、兵庫県:食品卸) | 大森食品(岡山県:食品卸)を子会社化(事業規模の拡大) |
2020 | 旭食品株式会社(未上場) | ヤマキ(静岡県:食品卸)を子会社化(事業規模の拡大) |
2020 | 株式会社西原商会 |
龍屋物産(神奈川県:珍味・嗜好食品の企画及び製造卸)を 子会社化 |
2020 | 株式会社西原商会 | 松山製菓(岐阜県:各種菓子製造)を子会社化 |
2020 | 株式会社西原商会 | Eatreat(東京都:管理栄養士・栄養士向け応援サイト「Eatreat(イートリート)」運営)を子会社化 |
2021 | 国分グループ本社(未上場) |
ヨシムラフード・ホールディングスの第三者割当増資を引き 受け(4.9%) |
2021 | 株式会社トーカン(未上場) | 三給(愛知県:給食市場向けの食品卸)を完全子会社化 |
2021 | 加藤産業(9869) | Song Ma Retail Joint Stock Company(SMRC)(ベトナム、加工食品卸売業)を子会社化 |
出所:各種開示資料より作成 |
食品卸売業界の需要動向は、短期的には安定的に推移しているが、中長期的には人口減少によって横ばいあるいは縮小すると思われる。今後の事業戦略として以下が考えられる。
「地域密着型戦略」
「商材の充実化および流通の効率化」
「システム投資およびIT戦略」
「営業エリアの拡大」
「海外進出」
「地域密着型戦略」
中小規模の食品卸会社が、大手食品卸に対抗するため選択する事業戦略である。
「商材の充実化および流通の効率化」
特に中小規模の食品卸会社は、商材の充実化および流通の効率化によって、各取引先との取引量の増加、収益力の向上を図る必要がある。
「システム投資およびIT戦略」
大手食品卸は、大規模なシステム投資によって商品調達から販売に至るまでのプロセスを総合管理するシステムを導入し、売れ残りや欠品などを防ぐために流通の効率化を図る戦略を取っている。また、同業界では消費者ニーズの多様化・成熟化に対応するため、従来の販売手法に加えて、デジタル化によって様々なデータの活用を通じた新たな販売戦略の推進が必要とされている。既に大手総合商社の中には、動画メディア・広告会社とスーパー向けレシピ動画などを提供するデジタルサイネージの設置拡大に取り組んでいるころがある。
「営業エリアの拡大」
営業エリアの拡大は売上増加に直接的に貢献するため、特に大手食卸がM&Aを活用して取り組んでいる。
「海外進出」
食品卸売業界では、将来の人口減少によって国内需要が縮小するため、今後、経済成長が期待され、人口が増加する東南アジアなどに進出する動きがさらに進むと予測される。