九州・山口・沖縄に本社や主要拠点を置く上場企業の2023年9月中間決算がほぼ出そろった。

 

集計した54社のうち、運輸業や外食業で好決算が目立ち、7割超の39社が増収だった。

 

新型コロナの5類移行で客数が増え、値上げの効果も表れたためだ。

 

ただ最終利益の増益・黒字転換は30社にとどまり、原材料費の高騰で業績回復が遅れている企業も多い。

 

最高益

　「観光需要が戻り順調に推移した。極めて良好な決算だった」。西日本鉄道の林田浩一社長は10日の決算記者会見で笑みを浮かべた。

 

　西鉄はコロナ禍で落ち込んでいたバスの旅客数が回復するなど運輸事業がコロナ禍以降で初めて黒字に転換し、最終利益は24・9％増の109億円と中間期で最高を更新した。JR九州も鉄道収入が27・1％増の704億円とコロナ前の18年同期の9割に回復し、ホテルや商業施設も好調で279億円の最高益だった。

 

　第一交通産業はビジネス客やインバウンド（訪日外国人客）の増加でタクシーの売り上げが10％の増収となった。燃料費高騰で昨秋以降、北九州市などでタクシー料金を値上げし、田中亮一郎社長は「移動需要の回復に加えて、運賃改定の影響がかなり出てきている」と振り返った。

 

　2年連続で主力メニューを値上げした博多ラーメン店「一風堂」の力の源ホールディングス（HD）は最高益を更新し、カラオケ店や飲食店を展開するウチヤマHDは黒字転換した。

 

価格転嫁

　コスト増に伴う値上げが好決算につながったのは製造業でも多く、製鉄所の耐火物を製造する黒崎播磨はインド向けの売り上げが伸びたほか、価格転嫁が進んだことで増益を確保。

 

業務用液卵のイフジ産業は、鳥インフルエンザの影響で鶏卵不足が続く中、値上げが奏功して増益となった。いずれも最高益を記録した。

 

　ピエトロは主力ドレッシングを22年度に2回値上げして黒字転換し、調味料のダイショーは業務用の価格転嫁で増収増益となった。

 

　ただ、商品の値上げは客離れにつながる可能性があり、すべてを販売価格に反映させるのは難しいのが実情だ。

 

ホームセンターのナフコは「巣ごもり需要」の反動や仕入れコスト増で減収減益だった。

 

石田卓巳社長は「本来なら価格転嫁しなければならないが、消費者の財布のひもがきつくなっている」と、物価高による消費者の買い控えで値上げが追いつかない現状を明らかにした。